第38章 芽吹き

「古川有美子」

まさに倒れそうになったのを見て、塚本郁也は慌てて支えた。彼の声には、本人も気づいていない緊張感が滲んでいた。

「へへへ」

古川有美子は彼に向かって笑いかけた。全身からは濃厚な酒の匂いが漂い、目はわずかに鈍く、焦点が合っていなかった。

元々白い肌が、いつの間にか桃色に変わっていて、熟した水蜜桃のように人を誘っていた。

塚本郁也は胸がドキリとして、すぐに彼女が酔っていることを理解した。

「歩ける?送るよ」

「え?私、もう食べたよ」

「……」

完全に話が噛み合わない。塚本郁也は仕方なく溜息をついた。てっきり酒に強いと思っていたのに、やはりさっきは止めるべきだったか...

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